何故、enchantMOONに心惹かれるのだろう。スペックが大好物な私が、それ程のスペックを持たないモノに、何故こうも心動かされるのだろう。
様々な記事で「日本発の」とか「日本の叡智を集めた」といったフレーズが躍る。コレなのか?いや、私は逆に違和感を覚える。強調するのは其処か?という思いを禁じ得ない。
では私は何処に惹かれたのか。
私は「大手」と評される某メーカーに勤めている。入社してから次第に会社が規模を拡大していくのに比例して、何だか会社が、そして生み出される商品が面白くなくなって行く気がするのである。
何故だろう?
どうも、規模の拡大と共に、管理が強化され、「勝手」が許されなくなっていることに起因しているようだ。ある商品企画マンが漏らしたのは「かつては10本に3本ホームランを打つことを求められ、1本位はホームランを打つことができた。ところが今や10本に10本ホームランを打つことを義務づけられ、結果、ヒットが3本出るのがやっとになってしまった。」という溜息。
企画会議では、理屈に彩られたモノが、ありきたりのセンスの営業マンやお偉いさんにあーだこーだと言われ、どんどん角をなくして行く。そうして、単に企画書ベースの商品しか出てこなくなった。全くワクワクしない。
例えば大手メーカーが手書き端末を出したらどうなるか?恐らく手書きデータをただ残すだけのマシンを一万円程度で出すのが関の山だろう。(実際にそういう商品が出ており、多分売れていない)
昨夏、NEXUS7が発表されるや否や、日本での発売を待てず、アメリカから並行輸入してまで手に入れた。そして驚愕した。「何でこんな高いスペックのマシンがこの価格で手に入るんだ!」と。日本メーカーが、どう足掻いても太刀打ちできる価格とクオリティではない。
企画がワクワクせず、価格が高いモノを誰が買ってくれると言うのか。日本メーカーの商品は此の辺りでウロチョロするばかり。ちっとも前に進めないでいる。
しかし、enchantMOONは其処に留まってはいない。その先をちゃんと見ており、ちゃんと付加されている。だからもっと高くても買いたくなる。たとえ安くても、買いたくならないモノは買わない。
それが堪らなく羨ましくもあり、憧れもし、そして悔しくもある。
それでも、たとえ出足は好調でも、enchantMOONは、多分大手メーカーを脅かすような存在にはならないだろう。でも其処には日本の大手メーカーが為し得ない領域があることを忘れてはいけないのではないか。enchantMOONを予約した人々は、ジッとしていられなかったのだろう。その身を賭してでも、後ろを押したかったのだろう。それを見届けたかったのだと思う。
楽しみにしている。「その先」を見てみたい。